「えっ、調査するだけが探偵?
とんでもありません! 探偵の世界にもいろいろあるのです。
ここでは、一般的にはあまり知られていないちょっと変わった探偵の世界をご紹介します。」


第07話  『姿無きストーカー篇 −中編−』  原作:サダ・マサシ

 依頼者の部屋は整然として、小奇麗であった。話し方も冷静で、お茶を出す余裕もあった。この人が何故そのような酷い目にあうのか、手掛かりを探っていたが、得るものは無かった。とりあえず、被害に遭う時刻が大体限定されているので、その時間帯前後の張り込み及び撮影をすることで合意に達し、翌日から着手することとなった。前回書いた内容の事件が起こるのであれば、ロケーション的に犯人には不利である。つまり、全て見渡せるので撮影はもちろんのこと、捕まえることでさえも容易である。実は、この時私はそのストーカーを捕まえることしか考えていなかった。初老の女性一人暮らしに恐怖を与える悪い奴は、制裁を加えなければいけないという正義感に駆られていた。本来、ストーカー対策の場合、調査する側は冷静でなければいけない。ストーカーという言葉の意味合いはとても微妙なもので、ストーカー自身がストーカーだとは思っていないことが多いのである。それは、ちょっとした気遣いが大きなお世話になってしまったものであったり、愛情の強さが裏目に出たりとそのこと自体を犯罪に結び付けるには、相当の証拠集めと裏付けが必要である。そういった意味で、あまり熱くなると見落とすことが多くなってくる。

また、被害を受ける側にも問題はある。ただの被害妄想や自意識過剰である場合が非常に多い。警察が手を焼くのもこのような微妙な感覚があるからであろう。ストーカー法が施行されてからも、それでストーカーの検挙率が際立って上がったわけではない。相変わらず、対処の仕様が無い事件が多いのが現状である。ただ、現実に被害に遭って困っている人は大勢いるわけで、そこのところの対処法など、もう少し警察が親身に行っていれば、被害者の心理もずいぶん違ったものになってくるのではないだろうか。現実に即したアドバイスが出来る警察官が非常に少ないように思う。わかりきったアドバイスと決まりきった行動しかしないのだから、ストーカーは増長するばかりである。被害者も、何も出来ずに怯えるだけになってしまう。本当に事件が起きてから動いても、既に時遅しである。時々各所轄を覘くと、暇そうに新聞を読んだり転寝している警官がいかに多いことか。応対も相変わらず偉そうで、ものすごく嫌悪感を持ってしまう。

重大事件発生の時だけ張り切っているようにしか見えないのは私だけであろうか。警察に不祥事が多いのは、要は暇だからそういうことをやってしまうのだろうと勘繰ってしまう。「事件は現場で起きている」という名台詞が、あるドラマであったが、もっと現場で事件を未然に防いで欲しいものである。机の上では何も解決しない。話が横道にそれてしまったが、そういった気持ちが私の正義感を強くしているのかもしれない。とにかく、意気込み強く調査を始めたわけである。今思えば、もっとこの時冷静であればと悔やんでしまう。

 現場着手の時間帯は、夕方5時頃から夜の10時くらいまでだ。不審者と不審車両の割り出しに集中した。玄関前やポストへのいたずら、部屋に向かっての石投げが主ないたずらである。犯人がどの行為を行っても、私からは全て見えるので、現場を押さえることは容易であった。依頼者は、この時間帯には外出をしなくなったので、車で付け狙われることは無い。少なくとも、現場に私がいる間は、依頼者の安全が確保できているわけである。依頼者の心の安息をもたらしていると思うと、やりがいが出てくるものである。

 そして、張り込みを始めて1週間、本当ならここで、現場を押さえましたとなるわけだが、実は何も起きなかったのである。1週間も同じ時間帯を張り込んでいれば、通行車両や通行人が大体把握できる。現場は住宅街の一角で、前に面した通りは、大通りへ抜ける裏道になっていて通勤時間帯や帰宅時間帯はかなりの通行量になる。買い物は、現場とは反対方向にスーパーがあるので、住民の動線は反対方向になる。つまり、人通りはそれほど無いのだ。通行する人間はすぐに絞れた。バス停を利用する人か、犬の散歩をする人、ジョギングをする若者や夫婦、といった具合に限られた。まずこのいつも通る人達を調べてみた。どの人も何も問題は無い。純粋に犬の散歩やジョギングをしている人達ばかりで、依頼者の部屋には一瞥もくれなかった。バス停を利用している人も同様である。周囲の住民はどうかと見ていたが、何処も特別なものは無かった。こういった状況だから、見知らぬ人が通ればすぐわかるのだが、そういった人が通ったとしても、何も起きなかった。

不審車両も皆無であった。大型トラックも通る道なので、長時間の駐車は迷惑になることが暗黙の了解になっているのか、停車する車両は自販機でタバコやジュースを買う位であった。

 依頼者に聞いてみた。張り込んでいる時間帯以外に異常が無いかどうかを。何も起きていないという答え。私の張り込みに不手際があり、犯人に警戒させてしまったかもしれない。そう考え、次の1週間は毎日張り込み場所を変えた。

相当の忍耐力が必要だったが、現場を押さえるためには当然のことである。ところが相変わらずの状況で、何も変化は起きなかった。長回ししたビデオを何回も検証してみたが、そこに写っているものはいつもの風景と何等変わりが無いものであった。

 この期間、依頼者に被害が全く無いことから、少し時間をあけ再度着手することにした。依頼者は、私が張り込んでいる間何も無かったことを感謝していた。こんなに平穏無事に安心して寝られた事は今まで無かった、と喜んでいたのである。私のしたことがこんなに喜ばれた良かった。と、思う反面、何か腑に落ちないものを感じ始めていた。そこで、私は依頼者に内緒でいろいろ調べてみる事にした。そこから出てきた事実は、私の戦意を喪失させたのであった。

UP DATE:2002/09/02
つづく
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