「えっ、調査するだけが探偵?
とんでもありません! 探偵の世界にもいろいろあるのです。
ここでは、一般的にはあまり知られていないちょっと変わった探偵の世界をご紹介します。」


第10話  『様々な職業の被調査人 −初体験篇−』  原作:大杉具多

今回と次回の探偵日誌では、私が従事したニ件の行動調査についてお話したいと思います。

当時、私は入社してからまだ間もなかったので当然ではあるが、連日、主にパソコンを使ったデスクワークに従事していたので、ようやく探偵らしいというか、事務所内での仕事ではなく調査現場に入る仕事に少しの期待感と多くの不安感を持って臨んだ。

まず、ひとつ目の調査。依頼者によると、調査対象の男性はある葬儀社に勤めているらしく、依頼内容は対象者がその葬儀社で確かに働いているという勤務現場の証拠が欲しいというものであった。要するに、対象者が仕事をしている姿を撮影する必要があった。

対象者が葬儀屋であるからには、勤務場所は葬儀場であることが多く、状況は通夜か告別式である場合が大半を占めるに他ならないわけであって、必然的に喪服での潜入調査を行うこととなった。この調査を行うにあたっての一番の問題点は、依頼者から提示された情報の中に対象者の顔写真がなかったことだ。ある程度の特徴や年齢は聞いていたが、それだけの情報での確認に当たり、私としては甚だ不安で仕方がなかった。果たして特定できるだろうか。
そして、もうひとつ私が心配していたことがある。それは一定の人物の写真撮影を、通夜という厳か且つ静粛な場で行うという不自然な行為であった。もちろん、後方からの撮影なら本人にも気づかれ難く容易いだろうが、正面から顔をはっきりと写さなければならないとなれば話はまた別である。

そこで私は先輩に相談をすることにした。 「もし、通夜の場でカメラを構えているところを不審に思われ、問い詰められたらどのように対処すべきか」と助言を仰いだのだ。経験豊富な先輩ならばきっと適切なアドバイスをしてくれるに違いない。 先輩は少し考えてから言った。
「頭がおかしい振りをすればいいさ」
私は愕然とした。

確かに、探偵には演技力も必要だろうけど……。先輩の言葉を頭の隅に追いやりながら、喪服で扮装した私はデジカメを懐に通夜の行われている斎場に何食わぬ顔で入り込んだ。幸いにも通夜の場には大勢の弔問客が訪れていたので、人込みに紛れて対象者を探ることができた。また、葬儀業者の人間は胸に白いプレートを付けていたので大勢の中でも目立っていた。しかし、対象者と思われる人物はいくら探して見当たらないのだ。
そのうち、来ていたほとんどの弔問客が行列を作り出した。どうやら香典を受け付けに納めるためらしい。これはマズイ。ただでさえ不審がられていたかもしれないというのに、その列に入らないとなると非常に目立つのである。だからといって香典袋を持っていないのに参列するわけにもいかない。早いところ仕事を済ませなければ。

その日は休日だったからなのかどうかは判らないが、結局その現場に対象者と思われる人物は居らず、その日の潜入調査で証拠の写真をカメラに収めるまでには到らなかった。

私は今回の初めての行動調査において、当然のことであるが一度の調査で何もかもがうまく行くとは限らないということを再認識した。また、探偵は調査内容によって毎回違った調査計画を練る必要があり、状況に応じて臨機応変に対処することを求められるのだということを実感した。 私は最後に壇上の遺影に軽く手を合わせその場を後にした。

そして、今になって思うことがある。あの時の先輩のアドバイスはきっと新米の私に与えた試練だったのだと。決してイジメではなかったのだと、思うことにする。

今回の被調査人は「葬儀屋」でしたが、次回は「風俗嬢」です。


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