「えっ、調査するだけが探偵? とんでもありません! 探偵の世界にもいろいろあるのです。ここでは、一般的にはあまり知られていないちょっと変わった探偵の世界をご紹介します。」


第15話 『車両追跡/ルーキー“TM”登場篇 −完結編−』 原作:大杉具多

 その後、携帯の電波が入る場所まで戻り、K先輩とは合流することができたものの、TMとの連絡はしばらく取れずにいた。
 ※ちなみにK先輩の腹痛はおさまったそうだが、今更どうでもよかった。
 
 こうなってしまっては私とK先輩は、TMからの連絡を待つ以外になかった。深追いをして、対象者に尾行をしていることを気づかれることだけは避けたかった。今回の調査の場合、見失ったとしてもまた次のチャンスがあったからだ。そのことを理解しているか、ルーキーだけに心配だった。

 約一時間半後。ようやくTMから連絡が入った。今、駅前にいるということだったので、私たちは向うことにした。TMはいったい今までどうしていたというのだろう。まさかずっと対象者を追っていたのだろうか……。

 駅前でTMと合流。彼は疲れ切った表情でこれまでの経緯を報告し始めた。
 なんでも、TMは私と別れたあとも対象車両を見失うことなく必死で追い続けていたということだった。
 対象車両は湖の駐車場を出ると、さらに町から離れ、山の奥の方へ向ったらしい。通行量が少なく、細い道路であったため、おそらくこのあたりから対象者たちは自分たちを追う車の存在に気付き始めたのかもしれない。
 対象車両はその後、スピードを上げたり急なUターンとしたりと不自然な走行を繰り返し、あきらかにTMの追跡を振り切ろうとしている様子だったという。普通はここで追尾を断念するのだが、TMは尚も追い続けてしまったという。
 やがて対象車両は町へ戻り、駅のロータリーに停車した。TMも少し間を置いて様子をうかがった。
 その時、対象車両から対象者が出てきた。そしてなんとTMの方に向ってくるではないか。いまさら逃げることもできずに焦るTM。眉間に皺を寄せ、どう見ても穏やかでない顔をした対象者が、TMの車の運転席のガラスをノックして言った。
「おまえ、さっきから何付いて来てんだよ」
「え、何のことですか?」とシラを切るTM。
「ずっと後ろ付いて来てたろ」
「偶然ですよ」
「警察行こう」と凄む対象者。
「いいですよ。別にやましいことはないので」
 TMのこの受け答えは正解だった。こちらは別に悪いことをしているわけではないので、警察に行ったところで問題はない。また、変に抵抗すると逆効果なのである。
 結局、対象者はそのまま捨て台詞だけを残し、TMを解放した。

 こうして調査初日に大変な思いをしたTMであったが、それだけいい経験にはなったことだろう。同じ失敗は繰り返さないようにすれば良いのだ。ある意味、離されずに追って行ったというのは誉めるべきことでもあるのだが……。

 それから蛇足にはなるが、上記のTMの報告を聞いたK先輩が「俺が近くに居ればな〜……」と言っていたのには毎度のことながら耳を疑った……。このこと社長に話すと「Kはやはり脳味噌がチュルンチュルンだな、腐っているとしか思えん。一度、病院で診てもらったほうがいい」と語っていたのを聞いて私も頷いてしまった。それにしてもK先輩の肝心な時に起こる腹痛は本当にどうにかならないものだろうか……。

 尚、その後の調査としてはこのような経緯があったので、車両の尾行調査は断念せざる得なくなったが、最終的には証拠を抑えることができたため、裁判を有利に進めることが出来、無事解決した。
 それにしても調査対象者と会話をしてしまうとは、かつてないことであった……。
 ということで、今回の探偵日誌では新人調査員による失敗談をお送りしました。
 ああ、やるせない。そして精神的にも疲れた調査だった……。


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